クズは定時で帰りたい

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謎の予備校の記憶

私が大学を決めた第一の基準は「家から通学できてしまわないか」だった。

一応公務員試験も受けたが刑務官だったのでやはり家からは通えない。

とにかく小学生くらいから一刻も早く一人暮らしがしたかったのだ。

 

学部はその次である。

なので国公立に絞っていた。

結局学部で絞り込んだらちょうど3大学しかなかったけどね。

 

 

東京人との攻防

ところが親族は良い顔をしない。

農業やるわけでもないのに北海道はおかしい、

東北は味が濃いから病気になる、中部は我が家のお金じゃお嫁に出せない、

日本海側は晴れが少ないから鬱病になる、

関西は関西弁で喋る、九州は男尊女卑、

沖縄は食べる物がない、中四国は観光するところで住むところではない、

さらには北関東は人を踏み台にする気質だからだめだ、と。

 

まだ「一人暮らしなんて無理」とか「ゴミ屋敷になる」などの現実的な線で攻めてくるならわかるが、

マジでそれ高校生に言ってんのかよ?な引き留めに効果はなかったどころか

むしろ「とにかく一旦この人らと離れたい」と意志が強くなった。

 

「一人暮らしができないなら大学受験はしないし就職もバイトもしない」

「というか都内に行きたい学部が存在しない」

「首都圏で唯一行けるところは通学定期で月1.5万かかる。

私立だし遠くてバイトもできないからお小遣いももらうしけど払えるのか」

私は折れない。

 

 

謎の予備校

遠い高校に行かせてやっているのだから塾代は一切出さないと言われていた私。

そんなもん勝手に来るじゃんという感じの早稲田塾とかの立派なDMにも

母は「行かせないからね」などと念押ししていた。

(もちろん行く気もなかった)

 

ところが高2の初夏、母からいきなり「予備校の体験授業を予約した」と言われたのだ。

「話だけでも聞いてみて、嫌なら私に言ってくれたら断っておくから」

不思議である。親が勝手に予約して子供が単独で行く。

しかも場所が総武線沿線。

とにかく家からも学校からも行くのがめんどくさい。

月謝を訊いてもはぐらかされる。

 

まあとにかくタダで何か教えてもらえるわけだしと行ってみることにした。

 

着いてみるとまず自習ブースみたいなところへ通された。

えらい静かな予備校だった。生徒の姿が見当たらない。

っていうか教室がどこだかもわからない。

まずおばさんが1人登場。志望学部や大学などを訊いて去っていった。

アンケートを書いて待っているとおばさんがおじさんを連れて戻ってきた。

おじさんが喋り始める。

「芝浦さんは第1志望が○○大。その次が○○。第3志望が○○。

東京の大学は受けないのかな?」

「はい」

「東京にいるんだからさあ、東京の大学は考えないの?」

「行きたい学部もないですし(本当)、一人暮らしがしたいので全く考えてないです」

 

ここからおじさんはいきなり志望校のダメ出しを始める。

しかもレベルが低いから(これも本当)とかではなく、要約すると

 

東京出身なのに東京を出て一人暮らしをする女なんて家柄が疑われて結婚できない

 

という話なのだ。おばさんはうなずく。

びっくりして何も出てこなかった。

「東京にいてわざわざ地方に出る。こんな不自然で怪しいことはない」

「東京にいるのに田舎に行く女は100%ワケあり」

「女の子を一人で生活させるなんてまともな親じゃない、親も異常者扱いされる」

「大事な娘がそばにいてくれるならお金なんていくらでもなんとかできるのが親」

とまあとにかく私が地方の大学へ行くのを完全却下である。

 

最終的に

「うちは特別な予備校でみんなを必ず合格させてきたが

芝浦さんみたいにろくでなしを目指す人は指導できないなあ」

などと言い始めた。

こちらはこんな遠い予備校へ行くつもりがなかったし、

そもそもここがどんな予備校なのかを教えてもらう前の話なので何も惜しくない。

 

「・・・ね、ここまで言われても、東京の大学は考えられない?」

「はい。一人暮らしは小さい頃からの夢で大学選びの第1条件なので

それが無理なら大学受験は諦めます」

 

人の道を大人が教えてあげてるのに聞けないなんて残念な人ですねなどと言われたが、

とりあえず帰れた。

 

家に着いた頃にはもう電話連絡でも行っていたのだろう。

どうだった?とも訊かれず、私はただ土曜日を半分無駄にした。

 

 

回し者だろ

まあどうせ「一人暮らしさせないエージェント」的なやつなんだろう。

あれが現実の予備校なら、こんなひどいことを言ってたら入塾生がいなくなる。

普通は教室だの自習スペースだの実績だの、そういうので釣ってからやることだし。

 

とはいえ誰が雇ったのか。

 

そもそも20年近く前である。ADSLが始まったくらいの頃だ。

どうやって調べたのか。

ちなみに今「一人暮らし やめさせる」「〜阻止」等で検索しても何も出てこない。

 

もしこういうのがあったとして、そんなものが果たして総武線沿線にあるだろうか?

地方にあるならわかるのよ。

東京から地方ってそんな少ないところをビジネスとして狙うかね?

 

1.父

文京区で働いていたので通りすがりで見つけた可能性がある。

オフィスは別のところにあるとか。

なんかあの2人の雰囲気、父が好きそうだったのよね。

ただ説教大好きな父、こんな回りくどいことをするだろうか。

 

2.母

当時税務署でバイトをしていた母。若手の知識を借りた可能性がある。

総武線沿線の駅名がすんなり出てきたのはかなり怪しい。

母は一人だと都会側では三茶までしか行かないのだ。

でも母はこういう小芝居みたいなことが嫌いな気がする。

 

3.西隣の伯母

妹が小さい頃は伯母宅に預けられていた私。

関西人なんて関西弁喋るんだから・・・と言ったのは伯母である。

従兄が揃って弁護士なので詳しいかもしれない。

ただ伯母が企画したとしたら、体験授業に行かせる担当を母が引き受けるとは思えない。

演技が苦手なのだ。

 

もう時効だから吐きな、という感じで母に訊いてみたこともあったが、

そんなこと自体忘れていた。

「予備校?私が言ったの?そんなお金ないじゃん」とのこと。

 

結局真実はわからないのだが、誰か同じ目に遭った人いないかね?

こんなところで訊いてもあれだけど。