大型案件を受注した。
といっても不安ばかりである。
なんせとにかく情報が少ない。仕様書こそあれデータも完成見本もない。
この物量なら普通ダミーのテンプレートでも作るはずなのだが
それすらないらしい。おかしい。
私も窓口担当も「無理。怖い」で意見は一致していた。
情報がなさすぎて請けかねるというこちらと、
物量があるからうちくらいしか請けきれないとのことでとにかく見積はほしいという先方。
ところが週末の会議で役員が、
「売上の低い○○チームにやらせよう」
は?
○○チームはやばい。
なんせ仕切ってるのが意識高い系の若い子である。
系なので全然実態が伴わない。
現実派の広東人(N1だしジョークはわかる)と
「俺みたいな社会不適合者がいるわけですよ」
「あなたの勤務態度でそれは謙遜や笑いにはなりませんね、フッ」
「それで部長からも俺ヤバい奴だと勘違いされてるし」
「勘違いではないと思います」
「・・・たばこ行ってきます」
などとやり取りしているのだ。やばい。
できるのか?
「できるんですかね」
「さー知らん」
「でもやってもらわないと困るんですよ、あのチームのせいでうちら大赤字こいてんですから」
「そもそもAuto知ってるんですか彼らは?」
「できるできひん以前に持ってへんと思います」
「じゃあ無理じゃないですか」
「**社の二の舞でまたこっちでマニュアルに落とし込むのやらされますよ?
工数がっつり請求しないとまずいですよ」
「やだあ」
「なんですそれ?」
かなり前にこちらの担当業務を無理やり受けて仕様書の解読とテンプレート作らせたのが
このチームでありこの業務なのだ。
彼が入ってくる前の話だった。ひょー。光陰矢の如し。
しかし受注の方向ということで、見積もりだけは作成した。
私は受注・失注が決まったらすぐに手を引くように窓口とマネージャーに念押しを続けた。
そこからひと月。
「芝浦さん工程表のテンプレート持ってませんか?」
「ありますけど」
「例のやつ、私が工程表作ることになりまして・・・うう」
「え?だめですよ。私が言う立場ではないですが(異動して別チームなので)。それは実働部隊にやらせないとだめです。
誰の指示ですか?」
「マネージャー」
ん?
いや、こちらは見積もりだけにしようと3人で話したではないか。
「Tさん、窓口さんに工程表作らせるってどうなってんですか?
こっちで計画立てたら『無理な工程組まれた』っつって巻き込まれますよ。
まあ別チームなんで私の知ったところでもないんですけど、ほんと知らないですよ」
「・・・後で話しましょか」
○○チームが退社したところで(仕事がないのですぐ帰る)、
Tさんが私と窓口さんの間に巨体をねじこんできた。
「例の件ですが、うちでやることになったんすよぉ」
「できんの?」
「やるしかないでしょう」
「ええ?いや○○チームめっちゃ暇そうじゃないですか。現にもういないし」
「やりたくないんですって」
は?
「え、やりたくないって、そんじゃあ私もあれとかこれとかやりたくないんですけど」
「やる気がないんです」
「やる気とか言ってる場合かよ」
「とにかくやる気がないんです、ぐちゃぐちゃ言ってやらへんし
もう僕からなんか言ってもスルーですよ」
「随分ごんぶとの神経をお持ちで。彼らは皮膚と神経で体が構成されてんのかしら?」
「それは逆にビリビリでしんどいっす」
「じゃあ役員の弱み握ってんだ?」
「もはや彼らが役員の弱みです」
「手の問題であなた方はできない。やらせるから請けた、受注した。
しかし担当者はやらない。じゃあ辞退じゃないんですか」
「でも売上は必要ですし」
いやいやいや。
「だからその彼らの足んない売上をなんであなた方が売り上げるのかって話なんですよ。
そんなら今のクライアントから同じ金額分もらった方が技術も上がるし関係も良くなるでしょう」
「部署全体として、ってことです」
「じゃあ人もらったらどうです?」
「だから誰もやりたくないんですって」
「意味わかんないし」
「僕だってわかりませんよ・・・なんでこんなんが罷り通んのか」
やりたくないからやらない。
なんでだ?イケメンが多い部署だから?
(役員はイケメンを贔屓すると明確に言ってるので)
もしや意識高い系にまんまと騙されてる?
「うちらもイケメンになるしかないのかもしれませんね・・・」
「無理やあ!」
しかし本当にどうするんだろう。
売上から考えても2人はつけないと難しいというか無理だと思うんだけど・・・